研究分野
強磁場で物質の神秘を解き明かします

(1) 強磁場で結晶成長を制御
液体と液体の2次元界面でC60結晶を成長させるとき、強磁場を印加すると100倍の大きさの結晶が作製される。これは磁気力(ファラデー力)、ローレンツ力、トルクの3つの力学的な磁場の作用と、磁気的エネルギー作用によると考えて仮説を立てているが、そのメカニズムは未解明である。図1に示すようにC60フラーレンからなるロッド結晶について、10Tの勾配磁場(減重力環境)で体積100倍の大きさの巨大ロッド(図2)を得た。創薬分野でタンパクの構造解析は最重要であるが、XRDにかかる純良巨大単結晶を得られない物質が多い。強磁場による巨大化効果のメカニズムを解明しつつ、タンパクへの応用をはかっている。アミノ酸のグリシン結晶は多形であるが、強磁場を用いて結晶系の多形制御にも成功しつつある。強磁場中で物質を作製し、その構造を変化させ、新 しい機能を引き出す。我々の研究は未知の世界を切り開く。

  


(2) 過冷却液体の磁性発現
市販の磁性流体(右上図)は強磁性微粉末を油に分散させた商品で、磁石を近づけるとトゲトゲのスパイクが出現する。一方で過冷却液体には固体構造に似た巨大クラスタが発見されている。また、液体-液体構造相転移も報告されている。これらより、強磁性を示す金属を溶融し、過冷却した液体では、キュリー点相当温度で磁気転移が期待できる。新しい物理がそこにあるはずだ。これまでの磁性流体は300℃で発火するた用途が限られていたが、液体金属磁性流体はさらに高温で動作するだろう。


(3) 強磁場で結晶成長を制御する有機高分子の強磁場効果
DNA 従来「磁性」というと金属が主流だったが、10テスラの強磁場 を用いることで、有機物質のような反磁性の物質にも磁場による配向、浮上、分離と いった効果が報告されている。我々はその中でも現在はアガロースゲル(これ は寒天として食卓へ、またDNA鑑定の支持体としてバイオ・医療へと広い分野への応用 がされている)というものを研究している。近年、ゲノム解析な ども世間を騒がせていますが、そのDNA電気泳動への応用といったところまで我々の研究はカバーしています。身近なものに強磁場をかけ、その構造を変化させる...そして新 しい機能を引き出す。我々の研究は未知の世界を切り開きます。


(4) 固体の基礎電子物性
金属 物質は電子の数、結晶の形で特徴が大きく変わります。 その物質の電子の状態や結晶構造を磁場、X線、コンプトン散乱、 電子構造計算(バンド計算)を用いて研究を行っています。これらの 研究は基礎物性研究といわれ、新材料の開発には欠かせない知識 を提供する研究分野です。また、物質を強磁場中(地磁気の10万倍 以上!)に置くと興味深い変化を起こすことがあります。目指すは、新発見と新発明!手許にある知識、勇気と 知恵で、世界に!

 

(5) エネルギー変換材料、磁性材料の基礎電子物性
電池 身のまわりにある充電電池を手にとって下さい。Ni-Cd電池とNi-MH電池が主なもので、後者の電極には水素吸蔵合金が利用されています。 水素吸蔵合金は水素の貯蔵などへの応用が期待されている実用材料です。水素 燃料は燃やしても水しか発生しないので地球環境にとてもやさしいクリーンエネルギ ーなのです。我が研究室では、この水素吸蔵合金の未だ完全には解明されていな い物性について、磁性という観点から研究をしています。将来、環境問題が改善さ れることを信じて…。



2015 Nov.